artist statement
私は光や水、植物、想像上の光景などの絵を描いています。
キャンバスに向かうとき、私の目には人類が誕生したころから受け継がれてきた静かな風景が見えています。
そこにある光や水、植物などを取り巻く空気の存在を感じられるように、奥へと続く空間を意識して作品にしてきました。
制作するにあたっては、筆やペンで自由に描く線や面、色むらや筆あと、落とした絵具など偶然できたものを残しておきたいと思っています。人の手を通して作られた予測や計算ができない色や形の中に、想像の余地と無限の可能性があると感じるからです。
また、イメージしていることを効果的に伝えるために、エアブラシやスクリーンプリント、ディテールに変化をつけるメディウムなども使っています。
最近では、絵筆では描ききれない部分を補うために、写真を原稿とした光に反応する印画法(サイアノタイププリント)にも興味を持ち、プリントしたものに絵の具で手を加えた作品も作るようになりました。
私は学生の頃から、ガラスに映る物を絵の中で再現しようとして制作してきました。
しかし透明なものへの思いは、長い年月を経て少しずつ変化し、徐々にガラスから水や光、空気などに広がっていきました。
それらはどれも本来とても美しく、人が生きていくうえで無くてはならないものです。
今の私がそういった物に心を動かされるのは、年齢を重ねるにつれ、守りたい大切なものが増え、生きることについて以前より深く考えるようになった事と関係があると思います。
今、地球上で私たちを取り巻く環境は汚染され、自然はどんどん破壊されています。
私自身、目に見えない放射能や化学物質、気候の変動などに対する恐怖を感じ、子どもの頃あった様々なものが急速に失われていくことに心を痛めています。
しかしその一方で、私たちは日々の生活において、多くのエネルギーや物を消費しなければ生きていくことができません。
私の中に、そのような矛盾に対する焦りや不安があるからこそ、より一層、命を守るために必要な澄んだ光や水、空気に憧れ、強く心惹かれるのだと思います。
私が求め続けている制作の基本は、失われていく目に見えない大切なものに目を向け、小さな美しさを見逃さず、絵画という形で視覚化することです。
cv
興津 眞紀子
大阪府生まれ
1982 京都教育大学教育学部
特修美術科卒業
個展
2003 トリックス美術館(三重)
2006 ギャラリー椿 (東京)
2007 三重画廊( 三重)
2010 ギャラリー慧(三重)
2015 清須市はるひ美術館(愛知)
2016 スペースプリズム(愛知)
2017 くずはアートギャラリー(大阪)
2021 同時代ギャラリー(京都)
グループ展
1981~2003 新制作展
2000~2012 アートフォーラム三重
受賞他
1989 上野の森美術館絵画大賞展 佳作
1998 熊谷守一大賞展 優秀賞
2011 北の大地ビエンナーレ 佳作
2012 清須市はるひトリエンナーレ 佳作
2015 清須市はるひトリエンナーレ 大賞
2017 アートオリンピア 入選
2022 アートオリンピア 入賞
コレクション
上野の森美術館、熊谷守一美術館
清須市はるひ美術館